今回は、アマチュアカメラマンの三橋俊之介様に貴重なお時間をいただき、2015年5月9日にインタビューさせていただきました。
プロフィール:三橋俊之介
カメラ歴:約40年(ブランクあり)
出身地:神奈川県
カメラ:ソニー、オリンパス
ブログURL:http://myfavorite2014.blog.fc2.com/
インタビュアー)
それでは今日はよろしくお願い致します。
三橋)
お願い致します。
インタビュアー)
まずはカメラとの出会いについておうかがいしたいのですが…
三橋)
カメラとの出会いは…大学に入学した年ですね。
インタビュアー)
では40年くらい…前ですね。
三橋)
そうですね。昭和47年ころですね。その時に父からカメラをもらいまして、それが最初になります。
インタビュアー)
カメラの機種は覚えてらっしゃいますか?
三橋)
当時でも古い機械だったのですけど、キヤノンⅡBに50mmレンズがついたのをもらいましたね。それが最初のカメラです。
インタビュアー)
ではカメラとの付き合いはもう40年以上になるわけですね。
三橋)
はい。ただ途中に何年かブランクがあるのですが…。
インタビュアー)
大学入学の際にお父様からカメラをもらって…
三橋)
父親がやっていたので引きずり込まれたような形です。
インタビュアー)
お父様もカメラをやっていらして、それに習うような形だったわけですね。
三橋)
その当時は僕は最初はスナップとかそういう写真を撮るのでは無くて、あくまで記録写真を撮影していたんですよ。
インタビュアー)
記録写真といいますと?
三橋)
当時は歴史関係の勉強をしていたので、発掘などに行った時に写真を撮っていたんですよ。そのためにカメラを使っていましたね。研究のための資料目的ですね。
インタビュアー)
では趣味では無く…
三橋)
実用ですね。実用から入っています。ですからもらったのが50mmなんですが、それが一本あれば用が足りてしまうんです。
インタビュアー)
なるほど。当時はそこまでカメラにこだわっていたわけでは無かったんですね。
三橋)
そうですね。
インタビュアー)
最初はそうした実用を兼ねて写真を撮影していたわけですが、それが段々と面白くなっていって趣味になっていったわけですね。
三橋)
はい、元々機械は嫌いではありませんでしたので。それで本格的にカメラを始めたのは大学を卒業して、会社に入ってからです。
インタビュアー)
入社されてからは研究では無く…
三橋)
本当に趣味のためにカメラをやるようになりましたね。
インタビュアー)
そこから趣味としてのカメラが始まったわけですね。
三橋)
最初は…確かペンタックスを買ったんじゃなかったかな…。自分で買った最初のカメラがペンタックスのSLだったと思います。
インタビュアー)
それはもちろんご自身で使うために…
三橋)
そうですそうです。SLを買って、一緒にS2型を買ってその二つで結構長いことやっていましたね。
インタビュアー)
今までは研究で使っていたのでこれからは趣味で…
三橋)
趣味といっても、まあ取り留めもなくやっていましたね…。
インタビュアー)
まあとにかく趣味のためにカメラを買われたわけですよね。
三橋)
その当時は…大貫さんには来てたかな…?伊勢佐木町にカメラ屋がニ~三軒かありましたので、そっちに行っていたのは覚えています。
インタビュアー)
お勤め先もそちらの方で…
三橋)
職場は海岸通りの方ですね。
インタビュアー)
では最初の頃は伊勢佐木町のカメラ屋に通われていたと…
三橋)
そうです。名前をあげていいのかわからないんですが、加藤回陽堂さんという半分薬屋のカメラ屋さんがあったんですけど、そこの社長と懇意になって、しょっちゅうお邪魔していました。
インタビュアー)
それは時代としては昭和…
三橋)
50年代くらいですね。35mmくらいのカメラから上は66、最終的には4.5インチくらいのものまで、色々と試しましたね。
インタビュアー)
いろんなレンズを使われたということですね。
三橋)
そうですね、買わなければもっとお金が貯まっていたと思うんですが(笑)。
インタビュアー)
そこはやはりみなさん、どうしても高い買い物になりますからね(笑)。
インタビュアー)
ではその時に、いろいろなカメラ屋さんと親しくなっていったわけですね。
三橋)
大貫さんと加藤回陽堂さん…あの当時はまだ千曲商会は無かったかな?
インタビュアー)
それが大貫カメラメインになっていったのは…
三橋)
当時は大貫さんがあって千曲さんがあって、長い事そこを行ったり来たりしていたんですが、結局千曲さんが辞めてしまって、他のカメラ屋さんも無くなってしまったので、結果として大貫さんだけになってしまった、というのが大きいですね。
インタビュアー)
千曲さんがカメラ屋を辞められたのは、いつ頃でしょうか?
三橋)
何年くらいだったですかね…。もう結構経ちますよ。10年くらいかな…。
インタビュアー)
そういう流れで、残っているカメラ屋さんが…
三橋)
大貫さんだった…ということですね。それにここはちょうど帰り道になりますので。
インタビュアー)
週に何回くらいいらっしゃいますか?
三橋)
あまり来ないようにはしてるんですけどね(笑)。毎日来てしまう事もあります。職場からの帰り道なので、どうしてもね。
インタビュアー)
今はどういったカメラを使われているのでしょうか?
三橋)
今は二機種使っています。ソニーのα7とそれからつい先日買い替えたオリンパスのEP3ですね。今は段々とオリンパスにしていこうかな、と考えています。というのも…年を取って目が悪くなってきまして、もうオートフォーカスじゃないと出来ないな…と実感しまして。
インタビュアー)
なるほど。
三橋)
手ブレはまあなんとかなりますけど、オートフォーカスは無いとつらいですね。目が悪くなってしまったので。一時期はライカなども使っていたのですが、もう距離計式ではピントが合わないんですよ。
インタビュアー)
はい。
三橋)
乱視があるので、ピントを合わせてもまた外れてしまうんですよ。どこでピントが合っていたのかわからなくなってしまうんです。なので何度もピントを合わせたりして、時間だけがかかってしまうんですよ。
インタビュアー)
確かにそれは問題ですね。
三橋)
しまいには50mmのレンズ使って10枚撮影して、それで全部ピントが外れていたことがあって、さすがにこれはもうダメだな、とあきらめまして。もう自信が無くなってしまったんです。それでオートフォーカスにしようかな、と思ったんです。ソニーでもいいんですけど、オリンパスにしていこうかな…と。
インタビュアー)
最初がキヤノンで…結構機種を変えられてますよね。
三橋)
いろんな機種を使っています。
インタビュアー)
機種には特にこだわりはお持ちでは無いのでしょうか?
三橋)
キヤノン、ニコン、ミノルタ、コニカ…。おそらく国産カメラは全メーカー使ってますね。
インタビュアー)
人によっては「このメーカーでないとダメだ」という人もいらっしゃると思うのですが。
三橋)
それは僕は無いです。大型だったらこれ、小型だったらこれ、というのはありますが…でもあまり関係ないですね、僕の場合。
インタビュアー)
今使われているカメラはデジタルで…
三橋)
今はもう全部デジタルです。
インタビュアー)
そこも人によっては「フィルムでないとダメだ」という方もいらっしゃいますが…。
三橋)
まあそういう人もいますが…僕の場合は現像で待っている一週間とかが、もうたまらないんですよ。
インタビュアー)
ああ、なるほど。
三橋)
それに結局コスト的にも合わないな、と思いまして…。
インタビュアー)
そうですね、今はフィルムを買うにも大変ですからね。
三橋)
そうなんですよ。デジタルの方が安いんですよ。だからどうしてもデジタルになってしまうんですよね。それにフィルムと比べてそんなに遜色があるか?と言われると…例えば二枚並べてどっちがどっちだ、と聞かれてもわからないですよ。
インタビュアー)
そうですね…。デジタル初期だったら違いはあったと思いますが…
三橋)
今の1300万以上の画素だったら、変わらないですよ。
インタビュアー)
そうですね。
三橋)
どっちって言われても、区別つかないですよ。だったらむしろデジタルの方が、いろいろといじくれる分いいのかな…と僕は思います。
インタビュアー)
気軽に色々と撮れた方が楽しい…ということですよね。
三橋)
そうですね。だからフィルムカメラの楽しさは…機械いじりの楽しさですよね。
インタビュアー)
ああ、なるほど!それはあるかも知れないですね。
三橋)
フィルムを入れて持って歩いて写真を撮るのが主目的では無くて、いじくってる楽しさがあるのかもしれませんね。
インタビュアー)
そうですね。フィルムカメラだと自分で修理も出来ますからね…。
三橋)
デジタルはどうしようも無いですからね。
インタビュアー)
壊れたら専門店に行かないとならないですよね。
三橋)
先程も少し触れましたが、カメラを続けてきたといっても、ブランクがあるんですよ。
インタビュアー)
どれくらいのブランクだったんですか?
三橋)
40年前くらいから続けていますけど途中で…30代はじめくらいで結婚したんですが、それからしばらくやっていなかったんですよ。
インタビュアー)
なるほど。
三橋)
やっぱり結婚してカメラ続けると、ちょっとカミさんに悪いじゃないですか(笑)。
インタビュアー)
お金もかかりますからねえ(笑)。
三橋)
なので一度やめたんですよ。それで20何年くらいはカメラをやらなかったんですよ。実際に再開したのは、7年位前かな?
インタビュアー)
ではその間は…
三橋)
その間の20数年は、ほとんどカメラに触ってないんです。
インタビュアー)
ということは、再開されてからはフィルムの最後からデジタルに変わる過渡期ですよね。
三橋)
そうですね。そうなる前はあまり知らないんですよ。
インタビュアー)
ではその間はカメラ屋さんにも…
三橋)
行ってなかったですね。ブランクの間はなにがどうなっていたのか、全然わからないんですよ。
インタビュアー)
なるほど。
三橋)
やっぱり自分の趣味に走るわけにはいかないんですよ。それだけ稼ぎがあるわけじゃないですし(笑)。どうしても家の方を優先しないといけない、というのがあって。今はもう子供が大きくなってしまったので、もう好き放題ですが…。
インタビュアー)
では20年ぶりにカメラ屋さんを探したら、先ほどの千曲さんとそして大貫と…
三橋)
そうですね。回陽堂さんはあったんですけど、もう店を畳んでしまう直前で…。他にもいくつかあったはずですけど。
インタビュアー)
昔はもっとカメラ屋さんもあったんですよね?
三橋)
伊勢佐木町に二軒あったんですよ。そこが両方とも店を畳んでしまったので…。
インタビュアー)
20何年ぶりにカメラを触って、戸惑いみたいなのは無かったですか?
三橋)
戸惑いみたいなのは無かったですね。まだフィルムカメラもありましたし。その時はまだデジタルでは無くて、フィルムカメラが残っていました。
インタビュアー)
どういったものを中心に撮影をされるのですか?
三橋)
街の情景ですよね。街の情景…スナップ写真ですよね。
インタビュアー)
風景写真みたいな…
三橋)
風景…というわけでは無いですね。
インタビュアー)
人も一緒に映っているような…
三橋)
そうですそうです。その辺の街中の情景です。本当に。
インタビュアー)
例えば街中であっても、人が二~三人映っているような…
三橋)
そうですね。横断歩道で待っている人とか、話し込んでいる人とか…。あとは看板とかですかね。この辺り飲み屋さんが多いじゃないですか。他にも自転車が柵に刺さってたり、変な物があるので、そういう物を撮影しています。
インタビュアー)
なるほど。
三橋)
どちらかというと「裏町」。裏町の風景が好きなんですよ。
インタビュアー)
なるほど、裏町ですか。
三橋)
観光地に行っても、まずそういう方へ行ってしまいます。
インタビュアー)
表では無い裏通りですね。
三橋)
そもそも観光地とかあまり興味無いです(笑)。観光に行かないんですよ。普通の街、裏町を歩いている方が面白いですね。
インタビュアー)
では撮影目的で旅行とかは…。
三橋)
しませんね。大体この辺…日ノ出町、黄金町が中心です。あとはちょっと怖いけど福富町とか…。その辺りの裏町ですね。
インタビュアー)
ほんとうにこの辺りですね。
三橋)
僕、横須賀の人間ですのであの辺りの裏町も結構行くんです。あそこはあそこでまた面白いんですけどね。外国人と一緒に笑いながら腕組んで写真を撮ったり(笑)。
インタビュアー)
初対面の外国人とですか?
三橋)
横須賀の人間って米兵に対する違和感が、あまり無いんですよ。子供の頃から慣れ親しんでるので。
インタビュアー)
例えば土曜日曜の休日などはカメラを持って、裏町に撮影に出かけるわけですか?
三橋)
いや僕は、通勤途中にカメラをカバンに入れていますので、大体毎日撮影していますね。
インタビュアー)
ああ、そうなんですか。
三橋)
通勤途中に撮影するので僕の写真は、大体は朝と夕方しか映っていないんですよ。
インタビュアー)
では歩いて通勤されているのですか?
三橋)
いや電車です。そこの日ノ出町まで電車で来て、降りて海岸通り、赤レンガに近い方へ歩いて…
インタビュアー)
その途中を撮影されるわけですね。
三橋)
そうですね。その途中をずーっと撮って…毎日のことですけど、結構いろいろ出てきますね。次々と新しいものが。
インタビュアー)
でも毎日撮影する、というのはそれだけで貴重な記録になりますよね。
三橋)
ブログをやっているんで、撮影した写真をそこに掲載するんですよ。
インタビュアー)
ブログをやられているんですか。
三橋)
少し載っけすぎだと言われるんですけど(笑)。
インタビュアー)
それで写真が貯まっていくと、貴重な記録ですよね。
三橋)
そうですね。ある程度撮り貯めていくと貴重なモノになっていくと思います。
インタビュアー)
そうした日常の風景って、結構後になると意外と覚えてなかったりしますし。
三橋)
そうですね。町はどんどん変わっていってしまいますしね。
インタビュアー)
「ここ工事している所、前はなんだったっけ?」みたいに、出てこない事ありますよね。
三橋)
そういった意味では貴重なのかな。そう珍しい所ばかり撮っているわけでは無くて、しょうがない物ばかり撮っているんですが(笑)。どうしてもこう面白い物ばかり撮ってしまうんです。
インタビュアー)
狙わずに撮る方が逆に貴重だったりしますよね。
三橋)
変わったもの、変なものを真っ先に撮るんですけど(笑)。
インタビュアー)
では土日とかはわざわざカメラを持って出掛けたりはしないと。
三橋)
まあ土曜とかは、ここに来たりしていますが。散歩がてらにね。毎回お茶をごちそうになったり(笑)。お昼食べに行ったり。
インタビュアー)
では普段の生活の中にカメラがあると。
三橋)
そうですね、ほとんどカメラと一緒に生活しているような感じですね。
インタビュアー)
20年のブランクがあってカメラに復帰して…
三橋)
でもねその間、全くカメラをやっていなかったわけでは無いんです。
インタビュアー)
と言われますと?
三橋)
子供の写真とか、記念写真みたいなのは撮影していたんですよ。
インタビュアー)
ああ、なるほど。
三橋)
その時はまだフィルムでしたね…。
インタビュアー)
では本格的に「趣味」としてのカメラは…
三橋)
趣味としてはこの7年くらいですけど、自分で見てもずいぶんまともになったのは、この数年かなと。ちゃんと真面目にやりだしたのは…。趣味として一線を超えた感じで真面目にやりだしたのが、という事です。
インタビュアー)
なるほど。
三橋)
あれが面白いこれが面白い、とバラバラに撮るのではなくて、ある一定のパターンで面白い物、自分の好きな物を、こう考えています、というのに沿った撮り方ですよね。そうすると不思議なことですけど、だんだんと「揃ってきた」と言いますか…人間の配置とか、大きさとか、そういうのが揃ってきた感じはしますね。
インタビュアー)
なるほど。パターンというか、型というか…
三橋)
「型」が出来た、と言えばそうなんでしょうけど、それがいいのかどうかは、何とも言えませんね。
インタビュアー)
例えば個展とか展覧会というのは、やってみたいと思われますか?
三橋)
個展は…理想ではありますね。やってみたいかと言われればやってみたいですけど、自信はありませんが。どう思われるのか、という興味はありますね。
インタビュアー)
例えば他の方たちとの合同展などは…
三橋)
合同展は一回、大貫さんの店内をお借りしてやった事はあります。
インタビュアー)
あ、そうなんですか。
三橋)
それだけですね。みなさんどう思うのか、反応を見てみたいという気はするのですが…。理想を言えば個展ですね。大それた事だとは思いますが。
インタビュアー)
なるほど。
三橋)
最終的な目標はそこでしょうね。やっぱり発表しないと面白くないですから。
インタビュアー)
発表はブログでもやられているんですよね?
三橋)
ブログでは発表をしてますね。結構しょうもない物を載っけていますが。
ブログ「だって好きなんですもの」
インタビュアー)
モノクロで撮影されているんですね。
三橋)
僕はほとんどモノクロです。
インタビュアー)
写真にいろいろと一言添えてらっしゃいますね。
三橋)
一言添えているのがいい、とは言われます。なんか気が抜けているというか…(笑)。
インタビュアー)
写真だけでは無く、コメントをつけているんですね。
三橋)
コメントだったりダジャレだったりします(笑)。タイトルだけでは無いようにしています。
インタビュアー)
ちょっと面白い系の…
三橋)
面白いのも撮りますし、真面目なのも撮りますね。
インタビュアー)
やっぱりモノクロとカラーだと、モノクロのが好きですか?
三橋)
僕はモノクロの方が好きですね。モノクロの方がなんか、勝手な思い込みですけど、写真が「物を語る」気がするんですよ。
インタビュアー)
そうですね、色が無い分そういう想像の余地が入りますね。
三橋)
想像の余地がありますよね。色がついてしまうと、即物的といいますか、そこで完結してしまうんですよ。
インタビュアー)
はい、わかります。
三橋)
モノクロだと、なんかその後想像が湧いてくるような、感じはしますね。でもカラーでブログに上げた方が人気はあるんですよね(笑)。
インタビュアー)
そうなんですか(笑)。
三橋)
やっぱり分かりやすいんでしょうね。あまりひねくった物をあげるとダメですね。
インタビュアー)
今までインタビューしてきた方たちでも、モノクロの方がいい、という方は結構いらっしゃいましたね。
三橋)
僕もそう思います。モノクロの方がキレイですよね。トーンが。
インタビュアー)
モノクロだと形がハッキリ出ますよね。
三橋)
そうですね。色があるとどうしても色に気を取られるんですよ。モノクロだと色が無い分形と構図に注目しますよね。
インタビュアー)
ええ。
三橋)
そしてそこからいろんな事を連想しますから…だから一番いいのは、色を連想できればいいんですよね。
インタビュアー)
変な言い方ですけど、色の見えるモノクロという事ですよね。
三橋)
例えば秋の紅葉などに光が当たってキレイに映っていると、そこからなんとなく色が想像できたり…。そういうのが撮れればいいですね。
インタビュアー)
あとは例えば夕日とか…
三橋)
そうですね。でもカラーだともうそのものズバリになってしまうんですよ。
インタビュアー)
確かにそうですよね。
三橋)
モノクロはある程度、物語性が出てくると思うんですよ。
インタビュアー)
見る人が補わないといけない分、ストーリー的なものが出てくる感じですね…。
三橋)
そうですね。まあでも…難しいんですよね。例えば引き算をやるべきなのか、足し算をやるべきなのか、未だに悩みますね。
インタビュアー)
と言われますと?
三橋)
引き算をやるとそこから連想は進むけど、足し算はいっぱい散らかっていた方が面白いような…、連想の幅が広がるような気はしますね。どちらがいいのか未だにわからないんですが。
インタビュアー)
その辺りが撮影するときの面白さにつながってくるんでしょうね。
三橋)
そうなんでしょうねえ。実際撮影する時は咄嗟ですけれどもね。居合い抜きでは無いですけれど。
インタビュアー)
人が入ると、余計に一瞬が大事ですよね。
三橋)
そうですね。人とか…今だと早朝に海の方でウェイクボードをやっている人がいたりするんですが、でも撮ろうとするともう大変なんですよ。すぐに沖の方に行ってしまったり…。そういう時はもう居合い抜きですよね。咄嗟ですよね。構図もなにも無いです。
インタビュアー)
そういう時はやはりオートフォーカスでないと…
三橋)
もうオートフォーカスでないと無理です。ピントなんて合わせていたら、先に行ってしまいますので。
インタビュアー)
動物とかもすぐ逃げますよね。
三橋)
猫なんかすぐ逃げます。中には逃げないのもいますが。だから結果的にスナップというのは、オートフォーカスでないと出来ないと思いますよ。確かにあらかじめ絞ってピントを合わせて…なんて言い方もありますが、だけどそういうのってどこにピントが来ているかわからないじゃないですか。全体があっているけど、どこにピントがあっているのか分からない。オートフォーカスってのは、ある程度ピントは合わせてくれているわけで。そういった意味で、群衆のスナップとかでもある程度メリハリがついた写真が作れる…ような気はします。私だけかも知れませんが。
インタビュアー)
ある程度思ったとおりに撮れるということですよね。
三橋)
そうですね。だから僕の場合はオートフォーカスでもマルチにしてないんですよ。ど真ん中だけに合うようにしてあるんですよ。自分の狙ったのは大体真ん中に来ますので…
インタビュアー)
そうですね。
三橋)
そうすればそこにピントが来ますからね。
インタビュアー)
確かにスナップは一瞬が勝負ですからね。
三橋)
だから構図なんてのは、後からついてくる物だと思うんですよ。構図なんて狙っていると、人が先に行ってしまいますからね。
インタビュアー)
そうですね。特に通勤途中はまた時間が無いでしょうし。
三橋)
無いです。だから例えば後ろから追い抜いていった自転車を撮影する時なんかも咄嗟ですよ。いつもカメラのストラップを手に持っていて歩くようにしています。
インタビュアー)
なるほど。
三橋)
そうなるともうオートフォーカスじゃないと、絶対無理です。手ブレ補正もついていないと…。
インタビュアー)
本当に歩きながら、手に持ちながら…
三橋)
そうですね。人間はほとんどそうですね。風景はまあゆっくりですけどね。ただ僕は風景下手くそなんですよ。絵葉書になっちゃう。
インタビュアー)
大体一日何枚くらい撮られますか?
三橋)
多い時では、行き帰りで一日に20枚くらい撮るときもありますね。雨が降っている時などは、カメラを濡らしたくないので出さなかったりしますね。
インタビュアー)
そういう気軽に撮れるのも、デジタルのいい所ですね。
三橋)
そうですね。それにフィルムはやっぱりその場で分からないじゃないですか。デジタルだと撮影したその場で「失敗した」とかわかるんですよ。あれは大きいですよ。頭の中だけでは、分からないですよ。
インタビュアー)
そうですね。
三橋)
フィルムはそれに、カメラを始めた時はそれこそ現像も自分でやらないといけなかったんですよ。
インタビュアー)
ああ、そうですよね。
三橋)
自分で現像・焼付け全部やりましたので。今でもやれと言われれば全紙までの焼付けは出来ますけど…やりたくないですよね(笑)。大変ですよ、あれは。
インタビュアー)
でしょうねえ。
三橋)
一枚がこの机くらいの大きさですからね。真冬にやって風邪をひいて、正月寝込んだ事もあります。ストーブなんかつけられませんからね。
インタビュアー)
大変ですよね。
三橋)
現像はともかく焼付けは大変でした。最近の人は、全紙まで焼き付ける人は、学校でも無いといないんじゃないかなあ?
インタビュアー)
どうでしょうねえ…?
三橋)
引き伸ばし機が普通の高さだと、四切までしか出来ないですからね、あれ。
インタビュアー)
学校とかプロの人とか…
三橋)
ですよね。僕らの時は自分でやらないとしょうがなかったんですけど。今はまた薬剤も捨てられないですから。
インタビュアー)
そうですね。
三橋)
始めた頃、独身の頃は風呂場で現像をして乾かしたりしましたけどね。…今は自分でやる人は少ないんじゃないかなあ。
インタビュアー)
まあよっぽど好きな人ですよね。
三橋)
当時はDP屋さんもあまりありませんでしたから、それが当たり前でしたね。時間もかかったから、自分でやった方が早かったんですよ。
インタビュアー)
DP屋さんが出始めたのは、その後くらいでしょうか?
三橋)
多分それくらいだと思います。40何年代にはそんな無かったと思います。ただ写真やってる人は多かったですけどね。
インタビュアー)
はい
三橋)
最初僕はスナップじゃなくて、記録写真から入ってそれから石仏とかを撮っていたんですよ。
インタビュアー)
石の仏さまですか。
三橋)
お地蔵さまとか、そういうのです。父からもらった機材をかついで、毎週土曜日に西武秩父の方へ出かけたんですよ。
インタビュアー)
大変ですね。
三橋)
結構な荷物になりましたよ。今と違ってマミヤの蛇腹のついた二眼の大きいやつとか、三脚をかついだりして。若くないと出来ないですね。
インタビュアー)
そうですね。
三橋)
それが結構しばらく続いたんですね。それから普通のスナップになっていったんです。
インタビュアー)
では今後も…
三橋)
そうですね、今後もスナップでしょうね。街と人に興味がありますので。
インタビュアー)
最後に…今写真を撮られている若い方にメッセージなど、何かありますか?
三橋)
そんな大仰な物では無いですけど…まあ、いろんな物を撮ってごらんなさい、という事ですか。いろんな物撮ってその中から何が自分が一番好きなのかそれが見えてきて…まあ当たり前の事なんですけどね。若い方はまだ時間がありますからね。それでいいんじゃないのかな。無理やり人のマネしたって、結局自分の物では無いですから、色々と撮ってみてこういうのが好きだと。それは人が同じ物撮ったっていいんですから。人それぞれで個性がありますから、同じもの撮ったって違うものになりますよね。
インタビュアー)
そうですね。それが写真の面白さですよね。
三橋)
それでいいんじゃないかなあ、と思いますね。あと最近はデジカメだけでいろんな表現が出来ますので、そういうのを使ってみてやるのも面白いでしょうし。別に人まねは悪いとはいいませんが、それだけで終わるんじゃなくて、そこから自分の物を見つければいいと思います。少し時間はかかるかもしれませんがね。
インタビュアー)
色々やってみて、そこから自分の味というか…
三橋)
そうですね。通り一遍で誰でもいいそうな事ですけど、それが真実だとは思います。自分の身の回りからでもいいんじゃないかな、とは思います。
インタビュアー)
はい。
三橋)
肩の力を抜いたっていいんじゃないかな、とは思います。そして機材に凝ってはいけない、という事ですね。レンズやら機材に凝ると、お金がかかって大変な事になってしまいますので(笑)。
インタビュアー)
いろいろ試してみて、自分に合ったものを選んでいくのが大事ということですね。
三橋)
そうですね。お金はかかりますが(笑)。
インタビュアー)
本日はどうもありがとうございました。
三橋)
ありがとうございまいした。
作品、インタビューなど何でも結構ですので、ご感想をお聞かせください。
お待ちしております!
大貫カメラ: ohnuki.c@lily.ocn.ne.jp